大学日和

渋谷区から港区を撮影

渋谷区某所にあるミッション系私立大学(ここまで書くと、名前を伏せる意味がほとんどなくなる)で調べもの。なぜ練馬区民がわざわざ渋谷まで行くのだと言われても困る。何階のどの辺にどんな本があるかを把握しており、日本文学関係の蔵書が豊富で、自分に利用する資格があり、自宅から館内までのルートを何も調べなくても思い出せる図書館というと、そこしかなかったのだ。他大学がどうかは知らないが、この大学は学部・院を卒業・修了した者なら、その後も自由に図書館を利用できる。都心にあるし、安くて旨い学食が20:00まで営業されているし、電車賃が往復700円以下のところに住んでいるのなら、利用しない手はない。
ところが利用申請するときに目的として「取材、執筆」と書いたら、「営利目的はちょっと……」と難色を示される。いやいや、これは商業媒体に発表するのではなく、ほとんど趣味で書いているのだと釈明して、ようやく理解してもらえる。のんびりとした校風で全国的に名が知られている学校だが、意外なところで官僚的である。民間企業が相手なら、「取材」のふた文字が絶大な効果を発揮するのに。資料をコピーしているあいだに小銭が足りなくなって、コピーカードを買う。何と、大学図書館コピーカードにまでデポジットが必要な時代になっていた。このままではデポジットなしで使えるのは日本銀行券くらいになるが、これだって使うときには消費税が、受け取ったときには所得税が請求されるのだから、デポジットが付いているようなものか。
そして調べものだが、これがまた笑い出したくなるくらい順調に新資料が見付かる。本来の目的とは異なるが、前から気になっていた問題についても、あっさり貴重な文章を発見できた。ポピュラー音楽について文章を書くときは資料を探すのに苦労し、ときには女性が買うのをためらうような雑誌を出典にしなければならないのとは好対照を成している。これは日本のアカデミズムやジャーナリズムに、大衆向けの歌舞音曲は研究、報道に値しないという偏見が漂っているせいだろう。映画はかなり状況が改善されつつあるが、ポピュラー音楽はあともう一歩、そしてわが最愛のサブカルチャーである漫画は、いまだに市井の愛好家のコレクションに頼らざるをえないままである。これは戦後になってから、漫画が当事者の予想を上廻るくらいの巨大産業になり、正確な出版状況を把握できなくなった(同人誌も含めると、もはや誰の手にも負えないだろう)ことと関係しているのだろうが。