Amis de la science et de la volupté

新しい部屋に5分で馴染む馬鹿猫

実家で療養しているあいだは友人宅に預けていた愛猫の春野を、1年3ヶ月ぶりにようやく引き取る。こいつと生活するために東京に戻ってきたようなものであるが、不思議と「感激の対面!」という気持ちにはならず。あるべきところにあるべきものが収まっただけ、という感が強い。猫が不在だったこれまでの生活が異常だったのであり、ようやく正常になったのだ。
ちなみに見出しはボードレールの詩からの引用。「(猫は)学問と悦楽の友」といった意味。"silence"(沈黙)だと間違えて覚えていたが、"science"(学問)なのね。「サイエンス」(フランス語だと「シアンス」)は自然科学を指す印象が強いが、ここはもっと幅広く学問一般を指すと解釈したほうがいいだろう。堀口大學が訳した新潮文庫版を持っているが、実家にあるので彼がどのように訳しているかは確認できない。

悪の華 (新潮文庫)

悪の華 (新潮文庫)

いまではムンクの絵が表紙になっているのか。19世紀中庸のフランス人の詩集を、活躍していた時期がまったく一致しないノルウェーの画家(ボードレールが死んだとき、ムンクはまだ3歳だった)の絵で飾るのは、ちょいとミスマッチな感がある。とかいって、この絵がボードレールの作品にインスピレーションを受けて描かれたとするのなら、こちらのとんだ勇み足だが。