懐かしの漫画たち

とりいそぎの用件がないので、むかし愛読していた漫画をだらだらと読み返す。『エスパー魔美*1が『モジャ公』と並んで、藤子・F・不二雄の最高傑作のひとつであるのを再確認する。あと父親が学校の美術教師をかねつつ画業にいそしんでいるものだとばかり思っていたのだが、専業の画家であるのを知る。なぜオレに上のような勘違いが刷り込まれたのだろう。
お次は福本伸行賭博黙示録カイジ』。これはやはり「限定ジャンケン編」が白眉であろう。むかし柄谷行人の本で、「資本主義経済では恐慌は決して避けることはできない。恐慌が起こる日をあとへあとへとずらしていくことで資本主義経済は成り立っている」という一節を読んだ。そのときは「そうかもしれないけど、いまひとつ実感が湧かないなあ」と思っていたのだが、「限定ジャンケン編」で得心が行った。微妙な信頼関係によって辛うじて保たれていた「健全」な経済が、たったひとりの人間の無思慮で無分別な判断によって脆くも崩壊していく過程を、これは見事に描き出している。よくできたギャンブル漫画くらい、経済学の入門書として適切なものはないのではいだろうか。

*1:ロリコンって言うな! そもそも精神分析を嫌っていたらしいナボコフは、自作のタイトルが心理学の用語として使われるようになったのを、どう感じていたのだろう。