私の処女作

などという題名の文章を書くには30年以上のキャリアを誇る必要があるだろうが、蔵書を整理していたら、生まれて初めて商業媒体に載った自分の文章が見付かったので、紹介する。
掲載誌は『創』の1993年12月号。同年の秋に創出版が刊行した『誌外戦』(ISBN:4924718084)の読者アンケート葉書に書き送ったものが掲載されたのだ。上記の本はそのころ猖獗をきわめていた有害コミック騒動に対する現役の漫画家の意見をまとめたものであり、論調は「安易な性表現規制はいかがなものか」で占められている。「規制反対派もヒステリックなのでは」というタイトルを附されて掲載された文章は以下の通り。

 この本を買うくらいですから私はもちろん「規制反対派」に属するわけですが、規制推進派の論調がヒステリックなぶん、それに反対する意見も必要以上にヒステリックになっているような印象を受けました(特にダーティ・松本氏のコラム)。規制推進派はすべて不細工で偽善的で悪趣味な中年女性だと決めてかかるのはやはり危険でしょう。即効性のないことは承知の上ですが、漫画だけではなくもっと広い文脈から「性」や「猥褻」の本質を捉え直さなければ、結局「権力」を持った連中に負けてしまうように思えます。古臭いことばですが、「理論武装」することはどうしても必要です。実際に創作にかかわっている人たちの感情論(何しろ死活問題ですので彼らが感情論に傾くのも理解できますが……)が中心になっている点に、この本の長所と欠陥があるのでは? 一歩退いた立場からの冷静な分析作業が俟たれます。
 生意気なことばかり書いてしまいました。すみません。(鈴木芳樹 22歳 大学院浪人)

論旨といい、文体の特徴といい、36歳になったいまとほとんど変わるところがない。何ともお恥ずかしい次第である。それならウェブで公開するなという向きもあるかもしれないが、オレはナルシストなのだ。放っておいてくれ。