"ore wa konpurekkusu o motta nihonjin da"

Jean-Louis Costes*1なるフランスのノイズ・ミュージシャンが気になっている。詳しい経歴はWikipediaに譲るとして(英語フランス語)、オレの興味を惹き付けるのは彼が1995年に、"SHIN-SAKOKU part1""SHIN-SAKOKU part2"という全曲日本語詞のアルバムを発表していることだ。タイトルや歌詞はここに引用するのが憚られるものが多いので、各自、リンク先で確認してほしい。
ヨーロッパのミュージシャンが自分の作品に日本的なガジェットを取り入れるのは、珍しいことではない。しかしリンク先をすでにご覧になったひとならお判りのように、Costesは一般的な「日本好き」とは様子が違うのだ。彼の詞に登場するのは、ゼンやカブキなどのトラディショナルな日本でもなければ、アニメやビデオゲームといったサブカルチャー輸出国としての日本でもない。渋谷で偽造テレホンカードを売るイラン人だったり、"hoppo ryodo"だったり、ヴァギナ・デンタータの恐怖に脅え、背の低さとペニスの小ささに"konpurekkusu"を抱いている青年なのだ。このフランス人はいったいどこからこんな知識とイメージを仕入れたのか。そして誰から日本語を学んだのか。1954年生まれで、若いころにアフリカ、南米、アジアを旅して、インドのヒッピー・コミューンに失望して帰国した経歴からすると、学生運動に挫折して第三世界(とはいまではあまり言わないか)を放浪している日本人と知り合ったのだろうか("SHIN-SAKOKU"の響きは、どこか「新左翼」と似てはいまいか)。コステス、裸の英雄という日本語ページがヒントになりそうなのだが、オレのネット環境からはどうしても文字化けしてしまう。
なお "Some of his albums have been banned in his native country of France for their obscenity" なので、amazon.frを検索しても彼のCDは購入できない。日本のレコード会社が発売に踏み切ることもなさそうだ(ディスク・ユニオンあたりに、こそっと置いてあるかもしれないが)。公式サイトで試聴できるので、しばらくはこれで満足しておくか。
なおCostes氏は最近では小説の執筆にウェイトを置いているらしい。ノイズ・ミュージックから純文学とは、「新鎖国」の国の誰かと同じではないか。

*1:日本では「ジャン=ルイ・コステス」という表記が定着しているようだが、本国では「コスト」と呼ばれているらしい。