Faux pas
この2週間ばかり日記の内容が迷走と爬行を繰り返しているのは(最初からそうだったじゃないか、と言われるだろうが)、何をやっても何も好転しないのではないかという虚無感に捉われているからである。当たり前の権利を主張できず、当たり前の義務だけを強迫観念的に遂行する。季節が夏から秋へと急変したためであろうか。
ゆえに大学生のころに買って、ほとんど手を付けていなかった下の本を拾い読みする。
- 作者: 川端康成
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1971/03/17
- メディア: 文庫
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彼は妻を極度に愛していた。つまり一人の女を愛し過ぎた。だから、妻が若くして死んだのは自分の天罰だと考えていた。その外には、妻の死について考えようがなかった。
「恐しい愛」
「世の中に私程気前のいい者はないよ。亭主を人にくれてやったんだから。ははははは……。」
「馬美人」
彼も彼女も小説家であった。二人とも小説家であるということは、彼等が結婚するに十分な理由であった。と同じようにまた、彼等が離婚するにも十分な理由であった。
「離婚の子」
と、こんなパラグラフではじまる掌編を読んでいると、多少は心の平安を取り戻せるわけだ。