口約束と友情
封印作品の闇―キャンディ・キャンディからオバQまで (だいわ文庫)
- 作者: 安藤健二
- 出版社/メーカー: 大和書房
- 発売日: 2007/09/10
- メディア: 文庫
- 購入: 15人 クリック: 119回
- この商品を含むブログ (45件) を見る
この著者には『封印作品の謎』(ISBN:4479300996)という著作もあるのだが(オレは未読)、こちらでは「封印」されている理由は「社会的な問題や差別表現の問題」で説明できるものが多かったようだ(「おわりに」より)。しかし『闇』で取り上げられた文化商品は「どの作品も作り手たちの中にある感情的な問題が大きい」と結論している(同上)。そう、この国の文化産業はほとんどが口約束と友情によって成り立っている「脆い」ものなのだ。それゆえに重要な事実関係を知る者が故人となったり、当事者間で感情的な縺れが生じたりすると、文化商品を流通させるための最終決定権が誰に帰属するのかが判らなくなり、責任のなすりあいの末に結局は「封印」されるのだ。「著作権」は都合のいい口実として恣意的に利用されるだけにすぎない。
こうした国に生き、細々としてではあるが文化商品の生産にたずさわっているオレには、「口約束と友情」が支えている業界の構造を批判する資格はない。なぜなら「口約束と友情」によって助けられたところは大きいからだ。ゆえに「欧米なみのビジネススタイルを」と提言する気にはとてもなれない。だいたいいまどき「欧米なみ」を提言するのが、何やらアナクロニズムめいている。