中産階級の英雄

朝日新聞のむかしの切り抜きを読んでいたら、ちょっと面白い記事があったので要約する。もっともせっかく見付けた切り抜きをまたもやなくしてしまったので、例によっておぼろげな記憶に頼ることになるが。
記事はボサノバ草創期を描いたドキュメンタリー映画『ディス・イズ・ボサノバ』のレビュー。この記事によればボサノバが囁くような歌唱法を多用したのは、都市部に住む中産階級の若者に人気があったからだとか。彼らが住んでいるのはだいたい壁の薄い安アパートで、夜中にギターを弾きながら大声で歌っていると、たちまちとなりの住民から文句を言われる。真夜中まで大声で歌って騒いでも文句を言うひとが少ない田舎とは、大きく異なる。この意味でボサノバはまさしく「都会的な音楽」なのである。こういう「下部構造が上部構造を決定する」みたいな話には目がないオレであった。
ところでむかしの漫画では、酔っ払った若者が生ギターを片手にフォークソングを歌っていたら、となりの部屋から怒られるというシーンがけっこうあったが、いまではあまり見掛けなくなったよね。これは音楽を聴くときも作るときも、夜中は密閉型のヘッドフォンを使うというライフスタイルが定着したからだろうか。