ボサノバと月光

昨日の日記で「ボサノバでは囁くようなボーカルが好まれたのは、都市部の中産階級の音楽だったからだ」と書いたが、これはまさしく都市伝説だったようだ。お恥ずかしい。
http://d.hatena.ne.jp/gotanda6/20070909/bossa
http://d.hatena.ne.jp/sarutora/20070909/p1
弁解がましいが(というか、まさしく弁解だが)、「名曲・名演奏秘話」にはこうしたもっともらしい伝説があり、つい騙されそうになる。とりわけ有名なのはベートーヴェンの「月光」だろうか。
http://www1.ocn.ne.jp/~har-snow/Beethoven.htm
「この曲にまつわるエピソードは色々あって、ベートーベンが散歩中に出会った盲目の少女のために作られた」というのは、ほとんど日本の国定教科書にしか載っていないそうだ。どうやら「読本の神様」と呼ばれた井上赳なる人物の作った「傑作」らしい(柴田南雄『王様の耳』より)。あとは作品ではなく作曲家だが、マーラーの臨終のひとことが「モーツァルト!」だったというのも、いかにもできすぎていて信じがたい。
ジャズ、ポップスとなるとすぐには適切な具体例が出てこないが、こういう「みんなが信じている俗説」をまとめて本にしたら面白いかもしれない。しかしこれを面白がる読者はごく少数で、営業部から「売れそうにない」と言われそうだ。あ、だからといって真似しないでね、同業者の皆さん。