オザケン・アゲインスト・セラピー?

小沢健二の話題になっているのかいないのかよく判らない論文「企業的な社会、セラピー的な社会」が掲載されている『社会臨床雑誌』第14巻3号が届く。簡単にまとめるなら、
「いまの世の中で起きているさまざまな問題を解決するには社会の構造そのものを変える、要するに革命しかない。しかし革命が起きると既得権益を失ってしまう基地帝国(アメリカ合衆国のこと)の指導者やそれに追従する学者は、あたかも革命以外の解決策があるかのようにひとびとに思い込ませようとしている。そのなかでもよく使われるのは、すべてを個人の『内面』の問題に帰着させる方法(いわゆる『社会の心理学化』、小沢健二が『セラピー的な社会』と呼んでいるもの)と、自然科学の理論から都合のいい部分を切り張りする方法(『利己的な遺伝子』のたぐいね)だ」
というもの。オレみたいな能天気な文化左翼は「当たり前じゃん」という感想しか持たなかったのだが、そうでないひとがどう読むかは判らない。ただしこれだけのことを説明するのに、50ページ(もっとも最後の10ページは参考文献一覧とそこからの引用で占められているが)もの分量を費やす必要があったのだろうかという疑問は残る。小沢健二は「そうやって専門用語を使って何でもかんでも『速く』説明しようとするのは、『基地帝国』のやり口と同じですよ」と反論するのだろうが。なお「革命」はオレが恣意的に選んだ語彙ではなく、論文中で執拗に反復されている。
寓話仕立てというか、寓話そのもののスタイルで書かれているので、社会や経済の仕組みに興味を持つようになった中学生に入門的なテキストとして読ませるにはちょうどいいかな、という感じであった。