湾岸工業地帯的リズム感

ペンギニズム

ペンギニズム

リアルタイムで買う機会はあったのに、何だか買いそびれていた糸井重里のソロアルバム(1980年発売)、アマゾンで再発盤を安売りしていたので、ようやく入手する。細野晴臣矢野顕子、おまけに沢田研二(!)までもが曲を提供し、ムーンライダーズのメンバーが演奏の脇を固めるという、いかにも「あの時代」らしい内容。
まだ1回しか聴いていないので断定的な物言いは避けたほうがいいのだろうが、「鈴木慶一はどこまで行っても鈴木慶一だ」というのが感想。このアルバムのアレンジはほとんど彼が手掛けているのだが、作曲が誰であろうとも、すべて「鈴木慶一の曲」に聴こえてしまう。自分らしさなんて、否定されても叱られても懲りずに出てくる「何か」だというのは、たしかにその通りなのだろう。
ここで過去の自分の仕事に言及するのも照れ臭いが、オレは『音楽誌が書かないJポップ批評』のYMO特集号(ISBN:4796636587)でムーンライダーズの『マニア・マニエラ』(ASIN:B000I6BLEK)について、

 YMOのレコーディングでお馴染みのTR-808やMC-4が大活躍。しかし同じ機材でリズム・パートを打ち込んでも、YMOのビートがどこかロマンティックな匂いを漂わせているのに対し、ムーンライダーズのビートは非常にインダストリアル。同じ東京出身といっても、山の手育ちのYMOと、湾岸工業地帯育ちのムーンライダーズの違いがここに表れている。

と書いている(自分でも忘れていたよ、こんなことを書いたのは)。『ペンギニズム』からも「湾岸工業地帯」的なせっかちさが感じられる。ゆえに「就寝前のBGM」として音楽を聴くようになった昨今のオレは、あまり熱心に聴き返さないかもしれない(笑)。