S/Zの悲劇ふたたび

以前の話の続きになるが、アマゾン・フランスは検索機能が弱く、ISBNコードを直接入力しないと求めている本が探せないことがあるらしい。そういえばオレもカスタマー・レビューが読みたくてこうの史代の『夕凪の街 桜の国』のフランス語版を検索して、見付からなかったことがある(最初は見付かったのだが、次に検索したときはどうしても見付からなかったのだ)。そしてこの記事を書くために蓮實重彦の著作でフランス語訳されているものがあるかどうかと探したら、『監督 小津安二郎』が見付かった。
ここまではまだいい。しかしアマゾン・フランスでは書名が"Yazujiro Ozu"となっているのだ。誰だよ、ヤズジロー・オヅって。
http://www.amazon.fr/dp/2866421914/
ちなみに上の書影をクリックすれば確認できるが、表紙にはきちんと"Yasujiro Ozu"とある。ということは、アマゾン・フランスか、アマゾン・フランスにデータを提供している会社のデータベースが間違っていることになるわけで、これではたしかに検索しづらいはずである。野坂昭如の『俺はNOSAKAだ』とロラン・バルトの『S/Z』にもとづきながら「S/Zの悲劇」という感動的なエッセイを書いた人物の著作がまさしくS/Zの悲劇に巻き込まれるとは、うっかり象徴的な意味を見出したくなるではないか。

S/Z―バルザック『サラジーヌ』の構造分析

S/Z―バルザック『サラジーヌ』の構造分析

反=日本語論 (ちくま文庫)

反=日本語論 (ちくま文庫)

追記

なお"Yazujiro Ozu"をクリックしたとたんに、アマゾン・フランスは坂本龍一のアルバムをこれでもかとばかりにリコメンドしてきやがった。坂本龍一に興味のあるフランス人と、小津安二郎に興味のあるフランス人は層が重なるんだろうなあ。