最近のオレは「環境管理」を使いすぎる

イキガミ―魂揺さぶる究極極限ドラマ (1) (ヤングサンデーコミックス)

イキガミ―魂揺さぶる究極極限ドラマ (1) (ヤングサンデーコミックス)

AERA」や朝日新聞本紙で作品や作者本人が好意的に取り上げられていたので興味を持ったが、たしかに「朝日的」な漫画であった。「『死』への恐怖感を植えつけることによって、『生命の価値』を再認識させる」ため、18歳から24歳までの若者の1000人に1人が無作為的に選ばれて死ぬように環境管理されたパラレルワールドの日本が舞台。
作者の間瀬元朗はオレよりもひとつ年上の1969年生まれ。おそらくもっと年下の漫画家だったら、同じ設定でセカイ系ラブロマンスか、血も涙もないバイオレンス・アクションを描いただろう。戦後民主主義的なヒューマニズムの限界を知りつつも、戦後民主主義への信仰を捨て切れずにいる最後の世代になるのだろうな、この作者やオレは。だからこそ「何でそこで安易な人情ドラマにしちゃうのかな」と不満を感じる一方、「こういう作品はいま必要ではないか」とも思うのだ。また「イキガミ」(「1000人に1人に選ばれた若者」に渡す死亡予告書のこと)を配達するのが仕事の青年を主人公にすることが、物語に重層性を与えている。「死を前にした人間」の毅然とした生き様を描く漫画になるのか、環境管理型権力を批判する漫画になるのか、どちらの方向にこれから進むのかは判らない。もしこのふたつの方向を両立させながら、厚みのある物語を生み出すのに成功したら、かなりの傑作になりそうな予感がする。いまのところは前者の方向を強調しているが、それだとオレには少しつまらない。