メンタルヘルスと治療

専門家にとっては噴飯ものの譬喩なのだろうが、怪我や病気の治療は規律訓練型と環境管理型に分けられるのではないだろうか。「健康になりたい」「恢復したい」という患者の意思を尊重した上で、医療関係者がサポートするのが規律訓練型。典型的なのが専門的な施設でのリハビリテーションで、日常的な例を挙げれば医師の忠告に従った生活パターンを守ることだろう。これに対して患者の意思はおかまないなしに薬品を投与し、身体に医療機器を装着するのが環境管理型。病状が急に悪化したときや、不慮の事故で大怪我をしたときなどは、どうしてもこちらの方法を取らざるをえなくなる。脳出血で入院した患者を拘束するのも、環境管理型だろう。
ここからが本題なのだが、メンタル系の病気では規律訓練型と環境管理型のどちらの治療がふさわしいのか、医師にも患者にも判断が付かないケースが多いのではないだろうか。重度の薬物依存症にはがちがちの環境管理型の治療しかないのかもしれないが、それほど深刻ではない場合、本人は規律訓練型の治療を望んでいるのに、医師が環境管理型の治療を勧めてくることはあるだろう。そしてこの食い違いが、症状をさらに悪化させている可能性があるのかもしれない。いわゆる「メンヘル系」のウェブ日記を読んでいると、きちんと通院しているわりにはまるで病状が好転しない例がそれなりに見受けられる。この原因が上のようなすれ違いにあるのではないか。環境管理型の治療といっても、「鉄格子の付いた病室に閉じ込める」といった古臭いイメージを想像しているわけではないが。