忘れまじ、永野のりこ

ARTIFACT@ハテナ系 - 忘れ去られる永野のりこ
http://d.hatena.ne.jp/kanose/20070130/nagano
昨日に引き続いて加野瀬さんの記事を枕にするのも芸のない話だが、永野のりこは本当に「忘れ去られた漫画家」になってしまったのだろうか。オレが細かい著作まで気が狂ったようにコレクションした漫画家は、あとにも先にも永野のりこだけである。オレがインターネットの素晴らしさと馬鹿らしさに目醒めたのは、慶應の学生が作っている永野のりこのデータベースサイト「ミミちゃん」(なんとまだあった!)に出会ったときだ。あれは1995年のことか。そしてサイン会に行ったことのある漫画家は、永野のりこひとりである。これも1995年のことか。
永野作品の多くはSFファン向けのギャグ漫画で、主人公はほとんどつねに長身痩躯で眼鏡をかけている白衣の理系少年(青年)であり、その性格はいささかマッド・サイエンティストじみている。マッド・サイエンティストというと世間の常識など気にしない孤高の人物という印象があるが、永野作品においては内面に深い悩みを抱えている(そしてそれを隠さんがために、より「マッド」な言動を繰り返す)人物として描かれている。
まあ、これだけでは魅力も特徴もほとんど伝えていないのだが、コミュニケーションスキル(嫌な言葉だ)の不足ゆえに苦しんだ経験のあるひとなら、一読をお薦めしたい。どの作品にも胸に迫る描写がきっとあるはずだ。なかでも『電波オデッセイ』(ISBN:B00007C8W1)は大変な傑作だと思うが、これはギャグの要素がほとんどないシリアスきわまりない作品なので、いきなり読ませるのは酷かもしれない。それでは何がいいかというと、基本的には同じ話しか描けない(描かない)ひとなので、どれでもいいような気がしなくもない。まあ、メジャーブレイクするきっかけになった『GOD SAVE THE すげこまくん!』(ISBN:B00007C8VX)を薦めておくのが無難なところか。