かつかつの印税生活

ホン! (GHIBLI COMICS SPECIAL)

ホン! (GHIBLI COMICS SPECIAL)

いしい作品の愛読者にはお馴染みの売れない純文学作家、広岡達三先生が大活躍の1冊。印税やら原稿料やら締め切りやら連載休止やらと、笑えない(でも笑ってしまう)話題が満載の四コマ漫画はもちろん面白いが、広岡達三本人が書いたという設定の掌編小説集「広岡達三コレクション」が読めたのがありがたい。これが何というか、いい感じで黴臭く、しかも結構だけは整った「文芸作品」に仕上がっているのだ。生まれるのが30年早く、太宰治よりは志賀直哉にシンパシーを覚えるタイプの文学青年であったら、オレもまたかような小説を嬉々として同人誌に投稿していたに違いあるまい。嗚呼。
ちなみに「広岡達三コレクション」の企画構成を担当した峯正澄というひとは1951年生まれで関西大学の出身とあり、いしいひさいちとは学生時代からの知り合いだったのだろう。