仲介から搾取へ

上の2冊を読んで感じたのは、レコード会社の従業員も悪気があって、いろいろなことをやっているわけではないこと。彼らはミュージシャンとリスナーのあいだに立ち、よりよい音楽を作るための一員として活動してきたのだ。しかしレコード産業が不況に陥るにつれ、彼らは次第に「仲介者」ではなく、「搾取者」として振る舞うようになった(経費削減のために所属ミュージシャンの数を限定するだなんて!)。

このような状況が続けば、ITベンチャーなどの他業種やインディーレーベルに優秀な人材が流出するのは、おそらくは避けられない。「着うた」でお手軽に儲けたり、インターネットを敵視する前に、レコード会社にはやることがあるのではないか。とある知り合いがmixi日記で書いていたことだが、このままではレコード会社が音楽産業の主導権を握る時代は、早晩に終わってしまうだろう。

なお数日前に「ヨーロッパの名門クラシック・レーベルは音楽配信に消極的だ」と書いたが、いましがたドイツ・グラモフォンの音源がiTMSで販売されているのを確認した。カルロス・クライバーブラームス「四番」がないなど、カタログがまだまだ物足りないが、よい傾向だと思いたい。