教養は就職の天敵

グロテスクな教養 (ちくま新書(539))

グロテスクな教養 (ちくま新書(539))

病気のときに読むようなものではないが、第2章まで読む。四方田犬彦の『ハイスクール1968』(ISBN:4103671041)を「こういう内容を喜んで読むのはどんな人なのだろうとムカムカさせるほど面白い本」と評するなど、「はじめに」から底意地の悪さが全開。105ページの「というわけで、教養は就職の天敵なのである」で爆笑。正しすぎる。しかもこの状況は、昭和初期から連綿と続いているのである。おまけに大学講師や編集者や文筆家になるために必要なのも、決して「教養」ごときではなく、コミュニケーション能力とやらなのだから困ってしまう。あはは。

民衆史、生活史

いささか古い話題になるが、歴史学者阿部謹也が亡くなった。このひとが書いた『甦える中世ヨーロッパ』(ISBN:4888881243)を高校生のときに読み*1、民衆史や生活史といったミクロなレベルから歴史を学ぶことの面白さを教わった。いまでも思い出深い1冊である。晩年は教養論(これは上記の高田理惠子の本でも少し触れられている)や日本人論に関心をシフトさせたようだが、そちらの仕事にはあまり興味が持てなかった。

*1:もちろん高校生にこんな高価な本が買えるはずもなく、父親が持っていたものを勝手に借りたのだが。