今日の日記はクラシック音楽に興味がないひとにはまったく面白くありません

「制服飲み」の件はコメント欄であまりにも多くの証言が出て整理が付かなくなりつつあるので、箸休めとして昨日聴いた音楽について書く。

Beethoven:The Late Piano Sonatas

Beethoven:The Late Piano Sonatas

CDではなくNapsterで鑑賞。ポリーニの特徴といえば浅田彰をして「ポリーニは、そのメカニズムに少しでも狂いが生じたとき、発狂するだろう」*1(『ヘルメスの音楽』)、柴田南雄をして「ポリーニはもはや行き止まりではないのか。少なくともわたくしにはこれ以外のショパンはもう考えられないし、もう要らない」(『レコードつれつれぐさ』)と言わせた病的な完璧主義と圧倒的な知性にあるわけだが、たしか50歳をすぎてからレコーディングされたはずのこの録音を聴くと、随分と丸くなったとの印象を受ける。本格デビュー直後のポリーニはイン・テンポで脇目も振らずに全力疾走するピアニストとの感が強かったが、ここでは柔らかいタッチでテンポに自在に緩急を付けながら演奏している。ベートーヴェンの後期ピアノソナタには、こういうスタイルのほうが相応しい。
ところでだいぶ前になるが『レコード芸術』のインタビューで彼はグレン・グールドについて、「興味深いピアニストだが、良し悪しは判断保留」みたいなことを述べていた。現代音楽の普及活動に尽力して保守的な聴衆を困惑させることがあるとはいえ、ポリーニはやはりヨーロッパの伝統の王道中の王道を歩んでいる人物で、ほとんど音楽的記憶を持たないカナダからやってきて聖人冒涜のような演奏を繰り返したグールドはできれば視野に入れたくない存在なのだろうなあ、といまにして思う。

*1:オレはこの一節がきっかけで、ポリーニに興味を持ったのだ。