37歳にして漱石をまともに読む
- 作者: 夏目漱石
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2004/05/10
- メディア: 文庫
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さなきだにこれは奇妙な小説である。「上」、「中」、「下」でそれぞれ説話論的な分断があり、「下」だけを独立した作品として発表したほうが完成度の高い作品になったと思ってしまう。しかしロンドン留学中に「文学論」に着手した漱石がこうした構成上の不首尾に無自覚だったはずはないわけで、やはりこれは意図的なものだろう。そしてこの作品には、きちんとした固有名詞を持った登場人物がほとんど登場しない。柄谷行人の口吻を真似れば、登場人物にいかにもそのキャラクターにふさわしい名前を与えるのが「物語」(漱石でいえば、『吾輩は猫である』や『坊っちゃん』)、どこにでもありそうな名前を与えるのが「小説」(漱石でいえば『こゝろ』以降)の違いということになる。するとこの作品はどちらにも属していないことになる。こうしたミステリアスな要素が、いまだにこの小説に惹き付けられる読者が多い証左になるのであろう。なお「先生」と「私」、「先生」と「K」の関係にボーイズラブ的な陰影を読み取ってしまうのは、オレが腐男子だからにほかならない。
- 作者: 夏目漱石
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 1991/02/20
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- 作者: 夏目漱石
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1952/01/22
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