ふたつのフランス愛好家

私見だがひとくちに「フランス好き」といっても、ふた通りのタイプがある。たとえばCélineという文字列から、いささかコンサバティヴな女性向けファッションブランドを連想するタイプと、『なしくずしの死』や『虫けらどもをひねりつぶせ』など、タイトルだけでもぎょっとさせられる小説を書いた作家を連想するタイプ(いまWikipediaで調べたのだが、後者の本名は"Destouches"なのだそうだ。知らなかった)。日本に入ってくるフランスの情報は前者向けのものが多いが、たまには例外がある。高校時代に澁澤龍彦経由でバタイユやサド、浅田彰経由でドゥルーズフーコーの名を知り、それがきっかけでフランス語とフランス文学を学ぶようになったオレは、後者の典型といえるだろう。おそらく前者が後者のフランス観を知ると、日本はフジヤマ、ゲイシャ、ウキヨエの国だと思っていた西洋人がいまの日本を知ったかのような落差を感じるのではないか。
と、つまらぬことを長々と書いたが、要するに昨日紹介したCDはもっぱら後者に向けて薦めたということを言いたかったのである。前者のひとが興味を持ったとしたら、申し訳ない。