格差社会を痛感

いよいよ引越しの準備に本格的に取り掛かる。行政上の手続きや衣食住に関するものの梱包はだいたい済ませてあるのだが、問題は本の選別である。1DK(5.5畳と7畳)のアパートにいま持っている本をすべて運び出すのは不可能で、実家に残しておく本と、東京に持っていく本を分けなければならない。目分量だが、いまの蔵書の4分の3は実家に残しておかなければならないだろう。東京に住んでいたころから、蔵書が一定の量を超すと、一部を宅配便に実家に送っていた。
そしてここで大きな問題が立ちふさがる。「(個人的に)好きな本)」と「(仕事上で)必要な本」の、どちらを優先させるのか。辞書類、資料類、フランス語の原書を持っていくのは当然として、ほかはどうするか。だいたいフリーライターなんていう職業は、「好きな本」と「必要な本」の境界が曖昧である。どの本がいつ必要になるか判ったものではない。実際、ある記事を書いているときに実家に置きっぱなしになっていて、かつ入手困難になっている本が必要になり、同じ本を持っている友人から引用したい箇所のコピーをファックスで送ってもらったことがある。もし実家まで取りに行ったら、その原稿から得られる原稿料も雲散霧消してしまうし、母親に「探し出して送ってくれ」と頼むのも何だか心苦しい。あとは漫画も、まだ連載が続いていて、今後も読み続けるであろうものは、持って行かなければならない(重要な伏線や登場人物を忘れてしまい、以前の巻を読み返す必要がよくあるからだ)。
もっと広い部屋に住めるほどの収入があるが、あるいは実家から東京まで往復で1500円くらいのところに住んでいれば、こんなことで悩まずに済むのに。地方と都市の格差、所得の格差といった問題を、はじめて痛感したよ。CDは大容量ハードディスクを買ってiTuneにリッピングすればいいかもしれないが、引越し当日まで、そんな悠長なことをしている時間はないのだ。