À la recherche du lecteur perdu

失われた時を求めて フランスコミック版 第1巻 コンブレー

失われた時を求めて フランスコミック版 第1巻 コンブレー

近所の書店で見掛ける。発売は去年の11月なのに、まったく気付かなかった。日本では文学作品の漫画化や、文学をテーマにした漫画は当たり前になっている。この辺の事情については、木村カナ「まんがで読む小説、小説を読むまんが」が参考になる。しかしフランスでは事情が違うようで、いろいろと物議を醸したようだ(「難解で読まれない名作、コミックで完売 仏人作家の長編小説」)。
と、リンク先の記事を読んでいたら、担当編集者が知り合いだと判明。この時点で迂闊なことが書けなくなったので(ちゃんと買います!)、話をそらす。いがらしゆみこが『ボヴァリー夫人』を漫画化しているのは以前にも書いたが、これをフランスに逆輸入したらどんな反響が起きるのだろうか。「日本人にフロベールが判るわきゃねぇよ」と一笑に付されるのか、意外と好意的に迎えられるのか。
あと「まんがで読む小説、小説を読むまんが」なら、いしいひさいちの諸作品や、関川夏央谷口ジローの『「坊っちゃん」の時代』五部作も見逃せない。どちらも予備知識がないとあまり楽しめないので、ふだん小説を読まないひとが小説に親しむきっかけにはなりにくいが。売れない純文学作家を主人公にしたいしいの『ホン!』(ISBN:4197500084)など、出版業界の内情をけっこうあけすけに描いており、現役の漫画家がこんなことまで暴露してよいのだろうかと心配になってくる。まあ、そういうところがこの作家の魅力なのだが。