文学少女と文化系女子

“文学少女”と月花を孕く水妖 (ファミ通文庫)

“文学少女”と月花を孕く水妖 (ファミ通文庫)

今回のメインディッシュは、ドイツ・ロマン派風のスパイスを効かせた泉鏡花の『夜叉ヶ池』。しかし毎回のようにおびたたしい数の文学者の名前が出てくると、「誰に言及していないか」が気になってくる。具体的にはマラルメ以降のヨーロッパの前衛文学と、「進歩的知識人」による日本の戦後文学である。単に作者の好みにすぎないと言われればそれまでだが、好みとは優れてイデオロギー的なものであり、この辺に言及するかどうかが、古風な「文学少女」と現代的な「文化系女子」の分水嶺になるのではないだろうか。
それにしても読者層がまったく被らない複数の媒体で、同じ日に「森茉莉」という文字を見掛けるとは思わなかったよ。