ゆいレールにも乗らない少女

月館の殺人 上 IKKI COMICS

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月館の殺人 (下)??

月館の殺人 (下)??

沖縄で育ったために一度も鉄道に乗ったことがない主人公の女子高生が、疎遠になっている祖父の招きで北海道の邸宅に呼ばれ、最寄り駅まで途中下車できない特別列車に乗り込み、そこで連続殺人事件が起きるという趣向。登場人物は主人公を除けば、鉄道マニアか鉄道関係者ばかり。綾辻行人は原作に徹しているので、「綾辻の小説はアイディアは面白いのに、文体が味気がなさすぎて損をしている」と思っているファンにはお勧めの一篇。またミステリに興味はないが、鉄道が好きなひとにも楽しく読めるだろう。
それにしても特に異常な趣味でもないのに、鉄道マニアが白眼視されるのはなぜなのか。原武史は『鉄道ひとつばなし2』(ISBN:4061498851)で、「スピードを自分の意思でコントロールできず、個人では所有できないのが、自動車にない鉄道ならではの特徴だ」といったことを書いているが、この辺がヒントになるのかもしれない。自動車を運転するのが一人前の人間としての証しならば、いつまでも鉄道ばかり利用しているのは、母性への依存から卒業できていない印象を与えるのだろうか。