つやぶるまい

遠戚の通夜のため東堀の葬儀会館へ。行きのタクシーの途中で新潟市ではすっかりすがたを消したと思った成人映画館を発見して興味を持つも、正確な所番地を把握するにはいたらず。しかし機会があったら再訪したく思う。などと通夜の前にポルノに興味を持つのはどうにもアルベール・カミュ出世作のようで、きわめて気恥ずかしい。
何しろ父の妹の夫の姉というくらいの「遠戚」なのだから、見知った顔はあまりなし。当然ながら、故人とも面識なし。しかし通夜ぶるまいの席で、来年の四月で小学生になる従兄の娘のイズミちゃんと遊ぶのに時を忘れる。
彼女の詩魂の有無は判然とせぬも、歌心と絵心のあることは実感す。歌心ではカシオか何かの一オクターブの音域しか出せない(しかも黒鍵はなく、音色も変化できない)簡易キーボードで楽しく共演す。絵心ではイズミちゃんの得意とするはアニメのキャラクターと植物で、動物や似顔絵は苦手とす。感情があり、動いているものの特徴を把握するには、まだ幼いのかもしれず。しかし野に咲く草花を描くさい、色鉛筆を下から上に走らせるのには驚嘆す。上から下に走らせるよりは、こちらのほうがよほど野生の植物の力強さが伝わる。
こちらも負けじとばかり(つまらぬ対抗意識ではある)、点描で色を塗る手法を教える。たちまちながらイズミちゃんはこの手法に興味を持ち、共作でアンプレシオニスムともシュルレアリスムともフォーヴィスムともアブストラクト・アートとも付かぬ落書きをノートに描き散らす。さらには彼女が持参したトランプで、うろ覚えのルールのポーカーで遊ぶ。これらは故人には失礼ではあるが、楽しいひとときであった。