E感覚とU感覚

いまBGMにクラフトワークのファースト・アルバムを聴いている。クラフトワークが前衛音楽の演奏集団として出発しており、『アウトバーン』の商業的な成功をもってポップ・バンドになったのはよく知られているだろう。"Kraftwerk-1"と題されたこのアルバムは、もちろん前衛音楽時代の産物である。
さてここで気になるのが、ドイツではE音楽(芸術音楽)とU音楽(娯楽音楽)を厳密に区別されていることだ(いまではだいぶ緩んでいるのかもしれないが)。クラフトワークのファーストは、あきらかに「E音楽」のグループとして出発した。そして『アウトバーン』以前の3枚のアルバムは、いまでは入手困難になっている。ここから先はまったくの憶測でしかないのだが、「U音楽」の世界に身を置いてしまったからには、「E音楽」時代の作品はなかったことにしてしまいたい、という心理が働いたのではないのだろうか。