感動したくない(できない)

レッド(1) (KCデラックス)

レッド(1) (KCデラックス)

読者は冒頭のカラー見開きで、瞼を閉じて瞑想(黙祷? 自己批判?)する主要登場人物の一覧を眼にすることになる。しかしこの時点では登場人物の名前も、物語上で果たす役割も判らない。ただ特定の登場人物の頭部に、丸括弧つきの算用数字が貼り付けられているのだけは確認できる。この数字は、物語の本編でもリフレインされる。そしてこの順番どおりに、登場人物は死を遂げていく。数字が貼り付けられていない登場人物に関しても、逮捕され、判決が確定するまでの日数が執拗に繰り返される。たとえば

谷川
この時24歳
長野県の
■■■山荘で
逮捕されるまで
あと約430日
死刑確定まで
あと約8100日

のように(157ページ)。さらに巻末にはご丁寧にも「重要人物相関図」が附され、

なぜこんな真面目な人間が命を落としてしまうのか? なぜこんなどうしようもないやつが生き残っていくのか? そこにも人の運命のおかしさや悲しさが見えてくるはずだ。

という、白々しい執筆意図までもが語られている。
この漫画は現実の事件(連合赤軍事件)に材を取った優れたフィクションでありながら、粗雑なノンフィクションのような話法で物語を進めていく。読者は特定の登場人物に感情移入し、複雑な伏線を読み解きながら行く末を想像する自由を許されず、冒頭と巻末に提示された図式の通りに話が進行するのを確認するばかりとなる。第2巻の出版予定は来年の夏。そしてこの調子で行くと、10巻くらいまで続きそうな感じがする。完結したら、作者も読者もひたすら虚しくなるだけなのではないか。いや、虚しくあってほしい、間違っても「感動作」にはならないでほしい。