日本SFは戦後のプロレタリア文学だ!(誇大表現なので信用しないように)

ARTIFACT@ハテナ系 - SFファンヘイト論は世代闘争
http://d.hatena.ne.jp/kanose/20070307/sffan
10代のころは熱心なSFファンだったが、いまでは「ごくたまに読むだけ」になった者として、ちょっと補足。もともと日本のSFは、草創期から激しいイデオロギー闘争が繰り広げられていた。『SFマガジン』初代編集長の福島正実は「SFは単なる娯楽読み物ではなく、新しい文学作品でなければならない」という強い信念の持ち主で、福島正実とともに初期『SFマガジン』を支えていた批評家の石川喬司は政治的には左派だと公言しており、ハインラインの『宇宙の戦士』を「どんなにストーリーが面白くても、軍国主義を礼讃する作品は認められない」と評し、読者投稿欄を巻き込んだ大論争に発展した。何しろあの筒井康隆でさえ、「作風がブルジョワ的すぎる」という理由で『SFマガジン』本誌にはなかなか書かせてもらえなかったのだから、当時の「激しさ」や「厳しさ」が伝わるだろう。
こうした土壌があるためか、その後も日本SF界には部外者の眼からすれば何だかよく判らない論争が続くことになる(ただしそうした論争が不毛だったとは思わない)。巽孝之が編纂した『日本SF論争史』(ISBN:4326800445)は、こうした論争を概括する上でのガイドブックになるだろう。定価があまりにも高いが、勁草書房なのだから許してほしい。
まあ、SFをめぐるさまざまな論争を「世代闘争」とまとめるのはちょっと乱暴で、むしろイデオロギー闘争の側面がある、と言いたかっただけである(オタク全体がどうなのか、とは別問題)。そして最後に、この記事によって加野瀬さんのSFファンに対する偏見がますます強まるのを祈る、と思わず屈折したことを書いてしまうがSFファンなのである。

「SFファンってかわった愛情表現をするのね」
「さみしい青年たちだからなー」
吾妻ひでお『定本不条理日記』所載「ダーティーひでおの大冒険」より