『はだかの太陽』はバカミスだ!

山田正紀恩田陸『読書会』(ISBN:4198622795)をちまちまと読み進める。「本に関する本」には

  • 読んだことのない本を読んだような気分になって慢心する
  • 読んだことのない名作の多さに打ちひしがれて気落ちする

というマイナス効果が付きまといがちだが、『読書会』にはそれがない。これはおそらく山田、恩田の両氏が、「じつは読んでいない」「読んだけれども話を覚えていない」といったことを素直に告白しているからだろう。特に山田正紀がこの対談集のもとになる企画がスタートするまで(すなわち50歳をすぎるまで)、アシモフをちゃんと読んだことがないという事実には驚く。かくいうオレも、アシモフは「黒後家蜘蛛の会」シリーズしか読んでいないのだが。それにしても「『鋼鉄都市』は不朽の名作だと思うが、『はだかの太陽』はバカミス(トリックやプロットが荒唐無稽すぎるため、まともな批評の対象にならない――でも決してつまらないわけではない――ミステリのこと)でしかない」と繰り返すのはやめてくれないか、山田正紀。これでは『はだかの太陽』のほうを読みたくなってしまうではないか。
ともあれ読者の健全な読書欲を掻き立てる1冊である。取り上げるジャンルがSFに限定されているので、誰にでも薦められるわけではないが。