歴史を変えてやる

昨日の話になるが、吾妻ひでお『逃亡日記』(ISBN:4537254653)を読了する。吾妻ひでおで卒論を書こうと思っている学生(いるのだろうか)は必読の一次資料である。シニカルで論理的なギャグが好きだったので、赤塚不二夫鴨川つばめは理解できなかった、という話はちょっと意外。それから「大ヒット作を出して大金持ちになるよりも、『漫画の歴史を変えた』と後世に評価される作品を描きたい」(大意)という発言には心打たれる。この志の高さがあるからこそ、鬱病アルコール依存症で苦しめられても、漫画の世界に戻ってくるのだろう。吾妻ひでおと較べるのもおこがましいが、オレだってどうせならそんな本を書きたい。収入は必要最低限でいいから。
以下は個人的な話に傾くが、オレは吾妻ひでおが本当に好きで読んでいたのか、それとも教養主義的に読んでいたのか、自分でもよく判らないところがある。

僕に限らず、おそらく1950年代後半〜1960年代生まれで、マンガとSFの両方が好きだった人間ならば、まず間違いなく吾妻ひでおさんのマンガにハマった経験があるはずだ。
http://d.hatena.ne.jp/kataru2000/20070122/p1

とあるように、「心あるSFファンなら、吾妻ひでおは読まなければならない」という時期があり、そうした風潮の上で吾妻作品を読み始めたのだ。そして同じ記事から引用すれば、

だけどその魅力を説明しろと言われても妙に難しいし、今、往年の名作を若者に読んでもらっても、どういった理解と反応があるのかわからない。ちょっとつかみどころの無い魅力なのだ。

というのもまたたしか。いまの若い漫画ファンに読ませるなら、ギャグ漫画よりは俗に「純文学シリーズ」と呼ばれている暗くて実験的な作品のほうがいいかもしれない。オレ自身、この系統の作品を好んでいた。どうせブンガク少年でございましたよ。