さくらのその

自分の日記でHopeless Homeless - 吉田秋生への違和感に言及して以来、吉田秋生の代表作はひとつくらい読んでおいたほうがいいという気になり、友人の薦めもあって『櫻の園』を購入した。

櫻の園 白泉社文庫

櫻の園 白泉社文庫

以下は箇条書きの感想文。まったくまとまっていないし、明日になれば違う感想が浮かぶかもしれない。

  • 登場人物の表情は、たしかに「知るひとぞ知る」存在だったころの大友克洋に似ている。しかし「吉田秋生の絵は大友克洋に影響されている」という予備知識がなかったら、何も思わずにページをめくっていたかもしれない。
    • 「少女漫画らしくない絵」とは感じなかった。少女漫画とはかたよった付き合いかたをしてきたので、どういう絵が少女漫画らしいのか、基準がよく判らない。
  • なぜ舞台が演劇部なのか、なぜチェーホフの「桜の園」なのか、必然性はあったのだろうか。それほど効果的ではなかったような。オレが気が付いていないだけで、メタフィクション的な仕掛けでもあるのだろうか。
  • 決してつまらない作品ではない。面白く読めた。しかし「問題作」として、大きく取り上げるほどのものとは思えなかった。あくまでもよくできた短篇連作集、という印象。
    • 性に関する直接的な言及は予想外に多かった。リアルタイムで読んでいた男性読者はそこに驚いて、「問題作」と感じたのかもしれない。1985年当時の少女漫画では、どの程度の性描写が許容されていたのだろうか(これは雑誌ごとの性格の違いも合わせて考察する必要があるだろう)。
  • 余談になるが、第1話に登場する「シンちゃん」は「オネアミスの翼」のシロツグに似ている。執筆時期からして、「シンちゃん」がシロツグのキャラクター造形に影響を与えた可能性はある。
    • そういえば「オネアミスの翼」も、「ポスト大友克洋」ならではの作品という気がする。類型的な美男美女がひとりも登場しない、「冴えない」SFアニメを作ろうという発想は、大友克洋がいなければ生まれなかったのでは。