山下達郎を従える坂本龍一

ほぼ日刊イトイ新聞」の矢野顕子について、坂本龍一くんと話そう。――勉強だけの人には、矢野顕子のすごさってわかんない。に載っている、坂本龍一のレゲエ談義が面白い。レゲエをはじめて聴いたときには、「こんなものをね、ありがたく取り上げてる音楽雑誌とかさ、もうたまんないと思ってたんですよ」というくらい強い嫌悪を感じたのに、「なんとか好きになろうと努力し」て、2年後には「表面的にはさ、ドミソとレファラしか使ってない音楽なんだけど、その奥にちょっと立体的なね、幾何学的なおもしろい世界」が見えたとのこと。モダン・ジャズやクラシックのように「お勉強」が必要とされているジャンルならともかく、レゲエをこんなにむきになって聴き込んだひとは世界的にも珍しいのではないだろうか。
ちなみに坂本龍一は「坂本龍一&カクトウギ・セッション」という名義で、本格的なレゲエ・アルバム"SUMMER NERVES"を作っている(1979年)。

サマー・ナーヴス

サマー・ナーヴス

このアルバムに収録されている'Gonna go to I colony'という曲では、坂本龍一山下達郎のデュエットという、世にも珍しいものが聴ける。しかも坂本龍一がメイン、山下達郎がサブという扱いで、どちらの声もエフェクターヴォコーダーを使って激しく加工されている。音楽家としてのトータルな実力ならともかく、ヴォーカリストとしての力量なら山下達郎のほうがはるかに上だとの認識が広く行き渡り、山下達郎の声を好き勝手にいじくるなど畏れ多いという風潮がある(と思うのだが、どうだろう)現在では、とても実現しそうにない。おたがいに無名で無謀だった時代だからこその産物というべきか。