漫画におけるエディションの問題

Black Jack―The best 12stories by Osamu Tezuka (1) (秋田文庫)

Black Jack―The best 12stories by Osamu Tezuka (1) (秋田文庫)

先週、脳の精密検査のためにかつて亡父が勤めていた病院に行ったところ、休憩室に『ブラック・ジャック』が置いてあった*1。この漫画を読み返すのは約4半世紀ぶりだが、それでもやはり面白く、帰るころには復刻版でじっくり読み直そうという気になった。
しかしオレは懐かしの名作漫画の文庫復刻版というやつをあまり信用していない。出版サイドによる恣意的な編集・改竄がなされている気がしてならないからだ。作者が故人であればなおさらである。
その悪い予感は見事に当たった。オレが買った文庫版、作品の収録順が連載順とまるで一致していないのだ。『ブラック・ジャック』のような長期連載作品では、主要登場人物の容貌や性格が少しずつ変化することがある。こうした変化を調べるのも漫画をきちんと分析・批評するためには必要な作業だが、このエディションではそれは不可能である(何しろ初出誌さえ明記されていないのだ)。
とんだ半端ものをつかまされてしまったとの思いが強いが、実家から歩いて数分のところにある書店にこのエディションしか置かれていない以上、オレはだらだらと続きを買い続けてしまうのだろう。残念ながら、ネットを駆使して現在入手可能なエディションのなかでどれがもっとも信頼できる編集がなされているかを確認した上で、市街の大型書店まで出掛けたり、オンライン書店で一括注文するといったことは、体力的にも経済的にもいささか厳しいのである。われながら言い訳がましいが。

*1:しかし無免許医が主人公の漫画を、病院に置くのはいかがなものか。