その拍手の<作者>とは誰か?

何も聞こえない!――無音の曲を本当に販売しているiTunes Music Store
半年も前の記事を話のまくらにするのも恰好悪いが(と、いちいち気にかけるのがもっとも恰好悪い)、アルバムをトラック単位で機械的に分割しているせいで、iTMSでは上のようにおかしなファイルが真面目に売られていることがある。たとえばクラシックのライブ録音盤には、拍手だけが独立したトラックになっているものが少なくない。このトラックがきちんと150円の値を付けられて、ほかのトラックと同等に売られているのだ。
嘘だと思ったらiTMSにアクセスして、「applause」で検索するとよい。なかにはアバド/ベルリンフィルのマーラー「第六」のように、単体で購入できるのが「applause」しかないという、とんだ現代芸術になっているアルバムさえある。おまけに「作曲者」が「Not Applicable」、「アーティスト」が「Audience」となっているケースが目立つ。なるほどたしかに拍手には適切な作曲者=著作権者は存在せず、演奏者=著作隣接権者はその会場にいた聴衆となる。近代的な著作権システムは、意外とふところが深い(ある程度の拡大解釈は許す)のであるなあ、と感心してしまった。