温度丸殿

映画「姑獲鳥の夏」について、何か大事なことを書き忘れていた気がしたのだが、何のことはない、サウンドトラックにオンド・マルトノが使われていただけの話であった。
オンド・マルトノはフランス人の技師、モーリス・マルトノ*1が発明した電子楽器。同じような「アナログ・シンセサイザー普及前の電子楽器」としてはロシアのテルミンが挙げられるが、テルミンが最近になってポップ・カルチャーの文脈で再評価されはじめたのとは対照的に、オンド・マルトノはもっぱら芸術音楽の世界でのみ知られ、演奏されている。テルミンがポップになったのに対し、オンド・マルトノが「ハイ」でありつづける理由については、いろいろと思うところはあるのだが、考えがまとまっていないので、詳しくは省略する。
日本語で読めるもっとも詳しいネット上の情報源は、おそらくは下のサイト。
http://pianotage.web.infoseek.co.jp/ondes/
日本ではハラダ・タカシという演奏家が著名。
http://mirabeau.cool.ne.jp/onde/
おまけにオンド・マルトノが演奏されるコンサートの情報をまとめたブログまである。
http://www.ondes-martenot.net/pblog/
この楽器を取り入れた本格的なオーケストラ作品としてはメシアンの「トゥーランガリラ交響曲」(1948年)が有名だが、極彩色の情痴絵巻とでも言うべきこの曲に、オレはあまり感心しなかった。おかげでオンド・マルトノそのものへの興味が薄れてしまったが、それでもどことなく気になる楽器ではありつづけた。そして「姑獲鳥の夏」でオンド・マルトノが使われているのを知り、あらためて何か書き連ねたくなった次第。ちなみにこのサウンドトラックで作曲を担当しているのは池辺晋一郎(「N響アワー」でどうにも応対に困る駄洒落ばかり言っているおじさん、と説明するのがてっとりばやいか)。彼は大河ドラマサウンドトラックとしても、オンド・マルトノを使った作品を多数作曲しているようだ。
と、特にオチも構成も考えずに、自分の知っていることをだらだらと並べてみたのであった。

*1:「Martenot」を「マルトノ」と表記するのは、「Deleuze」を「ドルーズ」と表記するのと同じくらい気持ち悪いのだが、それを言い出したらきりがない。