「戦前」への回帰

唐突に大岡昇平ザルツブルクの小枝』(ISBN:4122005744)より引用。はじめてパリを訪れた大岡昇平とパリ在住歴が長い森有正が、1954年に交わした会話。

(森)「東京も変わったでしょうね」
(大岡)「そりゃ、変わりましたとも。便利という点じゃ、戦前に帰りましたよ」

「戦前・戦時中は決して『暗黒の時代』ではなかった」は、いまではひとつの通説になっているが、反戦主義者の進歩派知識人であった大岡までもが実感を込めて「便利さという点では、戦前に帰った」と語っているのは、ちょっと面白い。
学制の話も東京の地理の話も、前にも書いたような気がするが……。