いつか「○○メソッド」が冗談ではなくなる日

嬉遊曲、鳴りやまず―斎藤秀雄の生涯 (新潮文庫)

嬉遊曲、鳴りやまず―斎藤秀雄の生涯 (新潮文庫)

伝記としてはきわめて面白い。しかしページをめくればめくるほど、斎藤秀雄が傑出した教育者であるとも、斎藤メソッド*1が画期的な教育法だとも思えなくなってくる。たまたまある時期の桐朋学園(およびその母体となった「子供のための音楽教室」)に優秀な生徒が陸続として入学して、彼らが「サイトウ・キネン・オーケストラ」を結成したため、過度に神話的な存在になっているだけなのではないか。
もっともこの著者の意図は「過度に神話的な存在」になっている斎藤秀雄の生臭い側面を描き出すところにもあったわけで、オレの読後感はそれほど的外れではないだろう。

*1:「斎藤メソッド」といっても、斎藤孝が考案しているものとは別物。