ミステリ脳の恐怖

神狩り 2 リッパー

神狩り 2 リッパー

悪い作品ではないのだが、「クオリア」やら「パノプティコン」やら「ダーザイン」といった単語を(いささか不用意に)持ち出したために、かえって物語としての妙味が失われた感がある。山田正紀はむかしから勉強した成果を素直に作品に反映させるひとだが、もういい歳なのだから(笑)、切り捨ててもかわまないものはばっさり切り捨ててもいいのではないか。まあ、そこでばっさり切り捨てられないひとの良さが山田正紀の魅力であり、彼が悪い意味での「巨匠」にならないゆえんでもあるのだが。

あとこの作品を読んで、ここ10年ばかりのオレが「ミステリ脳」を患っているのを実感した。エンターテインメント系の小説に「判りやすいオチ」「すべてがひとつの『真相』に向かって収斂していく快感」を求めてしまう傾向を、オレはこう呼んでいるのだが。はやくSF脳に戻りたい……