カヲル君!

複写と著作権メーリングリストのオープンセミナーに初参加。今回の講師は『著作権の考え方』(ISBN:4004308690)などでお馴染みの岡本薫氏。著作ならびに風の噂からして、さぞかしリゴリスティックなかただと思っていたのだが、予想以上にリゴリスティックなかたであった。

岡本氏の念頭には、まず「憲法」がある*1。たとえば輸入権の導入のさいに話題になった「附帯決議」は憲法で定められていないので、そもそも「ルール」の名に値しないという発言が、それを象徴しているであろう。この主張を一貫して崩さないあたり、岡本氏はじつに優秀な官僚(であるがゆえに、疎んじられている)だとの印象を強くする。情緒的な発言や論拠が曖昧な発言は一刀のもとに斬り捨てる鋼のごときロジックと、ユーモアに満ちた巧みな弁舌。著作権に関して中途半端な知識しか持っていない者(とりわけ「クリエイター」の立場に与する者)が、「岡本イズム」にあっさり感化されるのも無理はない。だからこそ、眉に唾をつける必要があるのだが。

ともあれFraternitéの訳語が「博愛」ではなく、「他者の尊重」(Respect d'autre)だとの指摘には、ある意味ではは蒙を啓かれた。正反対の意見の持ち主であろうとも、その意見は尊重されなければならない。その意味では「博愛」は日本的な「馴れ合い」とは正反対の概念なのである(と書いてしまう時点で、オレも多少は「岡本イズム」に感化されているのであろう)。

*1:ただし現行の憲法を改正してはいけない、という立場ではない。