敬虔さ

午前中、昼酒用の麦酒と軽い朝食を買うために近くのセブンイレブンに行ったら、サンドウィッチの売場でインドネシア系らしいおじさんと店員がちょっと揉めているのを見かける。おじさんがつたない日本語で「ハムが入っていないサンドウィッチがほしい」と言っているのに、店員はなぜそこまで「ハムなし」にこだわるのか、理解できていないようだ。ははあ、この男性はイスラム教徒なのだろうな、とオレはすぐに見当が付いたのだが、食に対する禁忌が強い宗教があることを知っている日本人は意外と少ないのだろう。かくいうオレにしても、去年のはじめにマレーシア(この国ではイスラム、キリスト、仏教、土俗の信仰などが対立することなく共存している)の屋台村で「ポークなし」を売り物にしている屋台を見るまでは、「食に対する禁忌」を実感したことはなかったのだが。

しかしそのおじさんがレジの前で「せめて朝食ぐらいは、ハムがないものを食べないと」と照れ臭そうに笑っているのが面白かった。このひと、本人ではなく同居している家族のほうが敬虔なイスラム教徒で、家族の目を気にしてハムなしのサンドウィッチにこだわったのかもしれない。このおじさんが夜ともなれば練馬駅前の牛角で、「ピートロの塩ダレと生ビール」を嬉しそうに頼んでいたら、それはそれで愉快な光景である。