またもや輸入権

しつこく輸入権の話を続けるが、オレは5年ぐらい前に「アジアの変わったCDを集めた単行本を作ろう」という企画にかかわったことがある*1。そのときに資料としていろいろなアジア音楽のCDを聴いたのだが、ピチカート・ファイブの「東京は夜の7時」や小沢健二の「ローラースケート・パーク」を「いただいて」いるアルバムがあって、かなり驚いた(もしかしたら、何らかの事情で日本にいられなくなったスタジオ・ミュージシャンやエンジニアが企画にかかわっているのかもしれないが、だとしたらますます興味深い)。

また、坂本龍一にはアメリカで独自に編集されたベスト盤がある。収録曲を見れば判るように、「戦メリ」のように日本国内で人気の高いリリカルな曲よりは、ミニマル、ダブ、アンビエント系の曲がメインとなっている*2

あと、これはid:junne君に訊けば判ると思うが、ノイズやオルタナティブといったジャンルでは「輸入盤でしか聴けない日本人ミュージシャンのCD」も、それなりにあるはずだ。

ここに挙げた例は、いずれも瑣末なものかもしれない。だが日本のミュージシャンの名前や作品が、われわれの思いもよらない国で、思いもよらない文脈で浸透しているのはたしかなのだ。還流CDやら何やらが規制され、こうしたCDにアクセスできる機会が少なくなり、「自国の文化が、海外ではどのような文脈で評価され、どのような影響を与えているのか」を知る機会が奪われるのは、日本にとっては不幸なことだろう。映画の世界では「日本人の作品が、海外の作品にも影響を与えている」のは、いまでは常識となっている。しかし音楽に関しても似たような事態が進行しているのは、あまり知られていないのではあるまいか。それを知ったら、文化庁はあっさり掌を返すのではあるまいか(笑)。

*1:この企画は、残念ながら頓挫してしまったのだが。

*2:そういえば映画のほうの『ハイ・フィデリティ』[amazon]でも、坂本龍一は「単純なロックは卒業して、デジタルレコーダーを駆使した凝った音楽が作りたくなった連中が聴く音楽」として扱われていたよね。