寓話じゃなかったのね

実家から持ち帰った高橋源一郎ジョン・レノン対火星人[amazon]を、新幹線のなかで再読する。新潮文庫版の初版が出たのは1988年の10月で、これはリアルタイムで読んだはずだ。学生運動に関してはまったくの無知だった当時のオレは、「ナンセンスだけどちょっと切ない寓話」として楽しんだのだが、いまとなっては「追憶の一九六〇年代」がけっこう露骨なかたちで描写されているのに気付かされる(「深淵」は、絶対にあの事件を指しているよなあ、とか)。高橋源一郎と同じ世代に属し、同じ運動に参加した経験のある批評家がこの作品をどのように評価したのか、気になるところではある。

まあ、講談社文芸文庫[amazon]内田樹の解説を読めばいいのだろうが、すでに持っている本を、その本の4倍の値段を出して買う気になれるかどうかというと、ちょっと躊躇してしまう。