態度が悪い?

今回の人質事件に関して、「(北朝鮮拉致事件被害者に較べて)家族の態度が悪い」という批判があるようだが、テレビをあまり観ないオレにはよく判らない。でもまあ、自分の子供や兄弟が政情不安定な外国で訳の判らん連中に誘拐されて、「3日以内にブッ殺す」なんて言われたら、動転してあらぬことを口走ってしまうほうが自然だろう。だいたい、政治家でもタレントでもない人間が、精神的に動揺しているときにカメラやマイクを突きつけられて、「万人に好感の持てる」発言なんてできるわけがない。

北朝鮮の事件は長期化しており、言いかたは悪いが、関係者は「メディアずれ」していた。とりわけ横田めぐみさんの夫妻はメディアへの出演経験が豊富で、しかも関係者のなかでは穏健派に属していた。夫妻の存在が、彼らに対する好感度を高めたのはたしかだろう。

また北朝鮮に関しては、イデオロギーの左右を問わず「あそこはひどい国だ」という国民的コンセンサスが出来上がっていたのも見逃せない。だからこそ挙国一致(笑)で、「彼らは同情し、擁護しなければならないひとたちだ」という機運が盛り上がったのではないか。それに対し、イラクに関しては輿論がふたつに分かれている。しかも北朝鮮の事件がある意味ではすでに「終わって」いたのに対し、イラクの事件はまさしく現在進行形で、数時間単位で状勢が変わっていた。これでは家族はますます「冷静な対応」ができなくなる。

北朝鮮拉致事件被害者とその家族と、イラクの人質事件被害者とその家族を安易に比較し、どちらか一方を批判するひとは、上のような事情をちゃんと勘案しているのだろうか。