下腹部

今年に入ってからアルコール摂取量を少な目にし(それでも平均よりはかなり多いが)、整腸剤をこまめに飲むようにしている。おかげで胃腸の調子は良くなったのだが、先月あたりからアルコール摂取量が微増し、これまた一昨日あたりから本格的に調子が悪くなってきた。

坂口安吾のエッセイに「歯の病と生殖器の病は陰鬱だ」といった文章があったが、下痢という病の特徴はその徹底した散文性にあるだろう。よほど症状が重くなければ、下痢になってもまともに思考できるし、特に強い痛みを感じることもない。肉体労働でなければ、仕事だってできる。散文的とはそういう意味だ。

しかし「いついかなる状況で便意に襲われるか判らない」という恐怖は相当なもので、ほかの病気になったとき以上に、移動や食事内容に気を使う(病院や薬屋に行こうとしても、「その途中で急に調子が悪くなったらどうしよう」と思ってしまうのだ)。そして何よりも困ったことに、この病気になっても異性の同情を買うことはないし、恋人の献身的な看病も期待できないのであった。