てんで似合わない

宿主が帰省しているので、しばらくひとりで食事をする日が続く。彼女は生理的に受け付けられない食べ物は少ないのだが、生魚は好きだが天麩羅やフライは苦手、饂飩は好きだが蕎麦は苦手、ラーメンは好きだが本格的な中華は苦手、懐石料理は好きだが洋風のディナーは苦手(対してオレは懐石を食べていると、「何の因果でこんなわびしいものに付き合わにゃならんのか」と腹立たしくなり、「面倒だからどんぶりごと持って来い」と怒鳴りたくなる。その点、洋風のディナーはナイフとフォークという蛮器でもって破壊衝動を発散できるのが痛快でよろしい)と、細かな好き嫌いはけっこうあり、ゆえにふたりで外食するときのレパートリーが限定されているので、せめてひとりのときはいつもとは違ったものを口にしたいと思っているのだが、そんなときにかぎって仕事が忙しく、食事に時間を割くのが面倒になり、ついつい吉野家やコンビニの弁当で済ませてしまう。センテンスが長い。だいたいひとりでぶらりと旨いものを食べ歩くなど、銀座の時代小説家ならともかく、練馬のフリーライターにはてんで似合わない。