ミステリヲタの萌え系娘

8人の女たち」(フランソワ・オゾン、2002年)[amazon]

大雪のせいで外部と連絡が取れない田舎の邸宅で奇怪な殺人事件が発生するという、10年ぐらい前に日本の「新本格」系のミステリ作家が好んで書いていたタイプの推理もの。探偵小説オタクでロリコン受けしそうなルックスのおてんば美少女が事件をひっかきまわすあたりも、じつに新本格している。ただしフランスの映画関係者に講談社ノベルズや創元推理文庫の熱心な愛読者がいるとは考えられず、フランスでもこの手の復古的ミステリが小流行しているのかもしれない(ポール・アルテのような作風が受け入れられているぐらいだからね)。

ただし登場人物全員が全員女性で、ちょっと非現実的なまでの愛憎劇が展開されるのが、フランス的といえばフランス的。結末は「まあ、ああするしかないよな」という感じ。物語全体を支える「ある前提」が最後になってくるりと反転して皮肉なオチが付くのも、フレンチ・ミステリではよくあるタイプ(だと思う)。

なお肝腎の豪華女優陣についてまったく触れないのは、オレが西洋人の俳優の顔をなかなか覚えられない性分だからであり、最後まで「カトリーヌ・ドヌーヴってどのおばさんだ?」と思いながら観ていたのだから世話はない。

しかしオレは「フランス的」や「フレンチ」という言葉を多用すれば、フランス映画をレビューできたことになると思っているのかね。