工学的ポリリズム

テルミン」(スティーヴン・M・マーティン、1993年)[amazon]

電子音楽の創成期に携わったひとは、いずれもカッコいいわけだが、そのなかでもテルミン博士のカッコよさは群を抜いている。若いころの美丈夫っぷりが強い印象を残すゆえに、身長まで縮んでしまったかのような晩年のすがたが胸を打つ。旧ソ連下で盗聴器の発明に従事していたとは知らなかった。

それから名前を忘れてしまったが、博士がテルミン以外に発明したという、いちばん低いオクターブの音がBPM60を刻み、1オクターブ高い音がBPM120、2オクターブ高い音がBMP180、3オクターブ高い音がBPM240、4オクターブ高い音がBMP300……(以下略)という楽器にも心惹かれる。純粋に数学的かつ工学的な手続きで奏でられるポリリズム! マシニックなビートにグルーヴを感じてしまう人種としてはぜひ実演に接したかったが、残念ながらこの楽器は現物が残っていないようで、映画ではピアノで擬似的に再現されていた(そういや、ライヒあたりが作ってなかったっけ、こういう手法の曲)。

あとビーチボーイズさん家のブライアン君は思ったことをそのまま口に出すのではなく、もうちょっと考えをまとめてから喋ったほうがいいと思いました。