ダブル健さん

新幹線大爆破佐藤純弥、1975年)[amazon]

あ、これは山田正紀の『謀殺のチェス・ゲーム』(1976年)[amazon]ではないか。冒頭の5分で、そう確信する。北海道から話がはじまり、ある「マクガフィン」が鉄道網を使って日本列島を南下していくという構造がほとんど同じ。対立関係にある主人公ふたりがいずれも現場には行かず(そもそも行くに行けない)、つねに後方から指示を出す点も似ている。

日本ではまだ「冒険小説」や「アクション小説」といったジャンルが確立されていなかった時代に、なぜ『謀殺のチェス・ゲーム』のような例外的大傑作が書かれたのか、オレは長らく疑問に思っていた。あるいは『新幹線大爆破』から人情ドラマ的な要素を排し、クールなゲーム性を際立たせた物語を作ろうとして生まれたのが、『謀殺のチェス・ゲーム』ではないのか。まあ、そういう「ネタ探し」的な視点で観なくても、この映画は充分に面白い。

ちなみに『スピード』[amazon]も『新幹線大爆破』を下敷きにしているようだが、こちらは未見。しかし「時速が80キロ以下になると乗り物が爆破する」という「設定」を真似た『スピード』よりも、「マクガフィンが日本列島を南下する」という「構造」を真似た『謀殺のチェス・ゲーム』のほうが、本歌取りとしては格が上なのではなかろうか。