獨逸軍

戦争のはらわた」(サム・ペキンパー、1976年) [amazon]

おととい観た「野良犬」と同じく、エンディングで「蝶々」(ソーミーミー、ファーレーレー、のあれである)が流れるのが印象的。「同じ日にレンタルした映画が、同じ曲を効果的に使っていた」という偶然を経験するのは2回目である。ちなみに1回目は「サンセット大通り」と「醜聞」における「蛍の光」。いずれも「黒澤明 vs アメリカの伝説的な監督」という組み合わせで、「日本のトラディショナルな音楽だと思っているひとがいるかもしれないが、じつはヨーロッパの民謡である」なんてところまで似ている。同じ偶然がもう一度あったら、オレはそれを必然と看做して何かに帰依することにしよう。まあ、ペキンパーは「『野良犬』したい」と思って、「戦争のはらわた」を撮ったのかもしれないが。

映画そのものはすこぶる面白い。第2次大戦をテーマにしており、枢軸国側の兵士をここまで「人間らしく」描いている欧米映画は、ほかにあまりないのではないか(イタリア映画やドイツ映画ではどうなのだろう。識者のコメントを俟ちたい)。ドイツ軍といえども決して「ハイル・ヒトラー」の一枚岩だったわけではなく、プロシャ貴族出身のエリート軍人、生粋のナチ党員、叩き上げの軍人のあいだでは温度差があった……なんて、言われてみれば当たり前の話だよな。大日本帝国の兵士だって、全員揃って頑迷な天皇主義者だったわけではない。